ティンバル果ー解説
ティンバル果 ー 解説
ブログも最近はこまめに書いてるわけではないのですが、そのくせ他の人はどのブログを読んでいるのだろうと気になります。その中で目に付いたのがティンバル果です。それほど多くはないのですが割とコンスタントに読まれています。 再読されている方がおられるとしたら嬉しい限りです。
それで今回は、この作品の背景を書くことにしました。
ティンバル果というのはスッタニパータ、第一 蛇の章の、六 破滅で出てきます。この破滅の章では12の破滅の門をブッダが答えます。
いくつか引用します。
91 「我らは破滅する人のことをゴータマ(ブッダ)にお尋ねします。 破滅への門は何ですか?師にそれを聞こうとして我らをここに来たのですがー」
92 (師は答えた)、栄える人を識別する事は易く破滅を識別する事も易い。理法を愛する人は栄え、理法を嫌う人は敗れる。
93 よくわかりました。おっしゃる通りです。これが第一の破滅です。先生! 第二のものを説いてください。破滅の門は何ですか?
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97 先生!第四のものを説いてください。破滅への門は何ですか?
98 みずからは豊かで楽に暮らしているのに、年老いて衰えた母や父を養わない人がいる。これは破滅への門である。
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105 先生!第八のものを説いてください。破滅への門は何ですか?
106 女に溺れ、酒にひたり、賭博に耽り、得るに従って得たものをその度ごとに失う人がいる。これは破滅への門である。
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109 先生!第十のものを説いてください。破滅への門は何ですか?
110 青春を過ぎた男が ティンバル果のように盛り上がった乳房のある若い女を誘(ひ)き入れて、かの女について嫉妬から夜も眠られない。ー これは破滅への門である。
111 よくわかりました。おっしゃる通りです。これが第十の破滅です。先生!第十一のものを説いてください。 破滅への門は何ですか?
以下略
このようにティンバル果は第十の破滅への門で出てきます。
翻訳者である中村元氏が 詳細な注を書いております。一部紹介します。
「仏典の植物」によるとインドガキ(ちんずうか)と言われるカキ族の木のようです。
注解によると、『青春を過ぎた男が』というのは、青春を過ぎて八十または九十となってという意味である。 『誘き入れて』というのは所有するということである。『 ティンバル果のような乳房のある女を』というのは『ティンバルの果実にも似た乳房のある若い少女を』ということである。『かの女に嫉妬から夜も眠られない』とは『若い女にとっては 老いぼれと快楽に耽ったり 共に住むのは楽しくない 。(他の)ひとが若い女を求めることがないように』 という嫉妬のゆえに彼女を大切に護って眠られない。 彼は愛欲と嫉妬に焼き付けられて外では事業に努めないから、破滅してしまうのである」という。
邦語で 嫉妬することを「やく」というそこまでも同じである。
これを近年の表現に翻訳すると「老いらくの恋」はいけないということになるのであろうか。 ネパールでは 結婚の際に年齢差が20歳以上ある場合は 結婚を禁止されているが、それはこのような趣意を生かしているのであろう。
さて、それで、私の歌に出てくる髪を染めたねっというはフィクションでしょうか?
違います。
実在の人物がいます。
その子は私のよく行く店のアルバイト店員でした。 18歳から20歳といったところです。
小柄で、太らず、痩せず、胸は豊満ではありません。 長い黒髪で、仕事に差し支えないよう時々たくし上げていました。
顔は可愛らしく整った顔立ちで、頼んだことはテキパキと対応していました。
その子はある冬の始まりの頃髪を真っ赤に染めました。 私は似ているけど違う人かと思いその事を言ったら 彼女は「私です」と答えました。
その後10日ほど経つとまた黒髪に戻っていました。 彼女は「飽きたので黒染めしました」と言っていました。
それからしばらくして彼女は店にいなくなりました。正規職に着いたのかもしれません。 あるいは学生アルバイトだったのかもしれません。
私は彼女を見て、ティンバル果の章を思い出し、歌を作りました 。それが「ティンバル果」です。 私はいつか伴奏付きの曲に仕上げたいと思っていますから縁があったらこのブログをお読みになった方に完成品を鑑賞していただきたいと思います。 最後にティンバル果の歌を再掲します。
「ティンバル果」
冬の気配
風が吹く
木々のざわめき
秋の終わり
君は髪を染めたね
見間違えたと言ったら
「私です」って答えた。
ティンバル果のような乳房をもった
君に恋することは破滅への門
青春を過ぎた男になって
かの女に嫉妬するのは破滅への門
だから
僕は欲望を離れて
君を愛そう
お父さんが娘を愛するように
完
サーヴァカ