仏陀の覚りの自覚の形成

ブッダの覚りの自覚の形成



想像してみて下さい。周りに私は覚ったと言う人が、現れたとしたときのことを。普通は、頭が変になったか、本気かと思いますよね。

そもそも覚り人が、自分は覚ったというものかどうかがわかりません。


後代では、師匠が弟子に印可を与えます。


釈尊は、覚りの自覚があったかというと、「覚り人に会うことは、まれなことであるから、あなたの疑問を尋ねなさい。私が、答えて差し上げましょう」

と質問を促す場面が、度々でてきますから、自覚があったといえると思います。


覚りの自覚は、一歩間違えると、慢心です。


釈尊の場合は、どう自覚の形成がされたか教典にありますから、引用します。


これは、以前ご紹介した、「覚りし仏陀の心境」の次の章で、出てきます。


サンユッタ二カーヤⅡ

梵天に関する集成

第一章第二節  恭しく敬う

中村元訳


一  

わたしは、 このように聞いた。或るとき尊師はネーランジャラー河の岸辺に、アジャパーラという名のバニヤンの樹の根もとにおられた。 さとりを開かれたばかりであったのである。


そのとき尊師はひとり隠れて、静かに瞑想に耽っておられたが、心のうちにこのような考えが起こった。

「他人を 尊敬することなく、長上に 従順でなく暮らすことはやり切れないことである。私はいかなる<道の人> または バラモンを尊び、重んじ、たよって生活したらよいのだろうか?」と。


その時尊師は次のように思った。ー「 まだ完全に実践していない戒めの体系を完全に実践するために、わたしは他の<道の人> あるいは バラモンを尊び、重んじ、たよって生活したいものである。 しかしわたしは神々や悪魔や梵天を含めての全世界のうちで、<道の人>やバラモンや神々や人間を含めての生きもののうちで、わたしよりも以上に戒めを達成し実践している人なるものを見ない 。わたしはその人をこそ尊び敬いたよって生活したいのであるが。


未だ完全に実践していない禅定の体系を完全に実践するために、わたしは他のバラモンまたは<道の人>を尊び、 重んじ、 たよって生活したいものである。


まだ完全に実践していない知恵の体系を完全に実践するためにわたしは他のバラモンまたは<道の人>を尊び、重んじたよって生活したいものである。


まだ完全に実践していない解脱の体系を完全に実践するために、わたしは他のバラモンまたは<道の人>を尊び、重んじ、たよって生活したいものである。


まだ完全に体得していない<われは解脱したと確かめる自覚(知恵と直感)の体系を完全に体得するために、わたしは他の<道の人>あるいはバラモンを尊び、重んじ、たよって生活したいものである。 しかしわたしは、神々や悪魔や梵天を含めての全世界のうちで、<道の人>や バラモンや 神々や人間を含めての生き物のうちで、わたしよりも以上に<わたしは解脱したと確かめる自覚>を達成している人なるものを見ない。 わたしは、その人をこそ尊び敬いたよって生活したいのであるが。


むしろ、わたしは、わたしがさとったこの理法を尊び、敬い、 たよって暮らしたらどうだろう。」


そのとき世界の主・梵天は、尊師が心の中で考えておられることを知って、譬えば力のある男が、屈した腕を伸ばし、あるいは伸ばした腕を屈するように、梵天界のうちから姿を隠し、尊師の前に現れ出た。


さて 世界の主・梵天は一方の方に上衣をかけて、尊師に向かって合掌し、尊師に向かって次のように言った。


十一

「 尊いお方様! そのとおりでございます。そのとおりでございます。 過去にさとりを開き、敬わるべき人々であった尊師らも、真理を尊び、 たよっておられました。未来にさとりを開き、敬わるべき人々である尊師らも、真理を尊び、 重んじ、たよられることでしょう。 また 現在 さとりを開き、敬わるべき人である尊師も真理を尊び、重んじ、たよるようにしてくださいませ。」


十二

世界の主・梵天 はこのように言った。 このように説いたあとで、 次いで 次のように説いた。


「 過去にさとりを開いた仏たち、また未来にさとりを開く仏たち、また多く人々の憂いを除く現在の世の仏、 正しい教えを重んずるこれらの全ての人々は過去に住したし、 現在住し、また未来に住するであろう。 これが諸仏にとっての決まりである。

それ故に、この世においてためになることを達成しようと欲し、偉大な境地を望む人は、仏の教えを憶念して、正しい教えを尊重しなければならない。」


       一以上ー




このように釈尊は、みずからさとった理法にたよることにしたようです。

彼の説いた(さとった)理法は、時代とともに、様々に、解釈され、発展したけれど、原石の輝きは2500年経っても失なわれていないと、私は思います。


     


   サーヴァカ

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