1万5千歩歩いた話
1万5千歩、歩いた話
私は普段、仕事のある日でも1万歩前後しか歩きませんが、ある日1万5千歩まで歩数が伸びました。
その時の暇つぶしの失敗談です。
予備知識として、私は、ズボンの右ポケットに家と車と会社のロッカーの鍵をリングで繋いだ束を入れています。左は携帯灰皿です。左胸ポケットに加熱式タバコキットとタバコスティックを入れています。
ご存じない方のために加熱式タバコを説明すると、タバコキットに、円筒形の穴が開いていて、そこに棒状のタバコスティックを差し込むと加熱が始まり、ニコチンを摂取できます。
さて、その日は金曜日で、翌日は休みでした。仕事がおわり、制服を通勤着にきがえ、会社のまえの信号を待っていました。加熱式タバコをセットし、吸いながら、予備のタバコスティックを制服のポケットに入れっぱなしだったと思って、
明日は休みだし、取りに戻ろうと思いました。ちょっと急いでたせいか、体の向きを変えたとき、タバコスティックが体のどこかに当たり、途中で折れてしまいました。
ヤバい、取り出さないと、次のタバコが吸えないと思いました。
妙に急いでいる時は、こんなもんだ、確かロッカーに割りばしがあったはず、何とかなるかもと思い、3階のロッカールームに向かいました。
ロッカールームに着き、制服のポケットを調べると予備スティックはありません。おかしいなと思いながら、通勤着の胸ポケットにてをやると、なんと2箱とも入っています。何やっているんだ。なんのため戻ってきたのかわからないと思いながら、割り箸を探すとありました。
しかし、タバコキットのなかに残っているタバコスティックの切れ端はうまく取り出せません。仕方がない、家までタバコを我慢するしかないと思いながら家に帰ることにしました。
帰りながら、気が急くと、どうもささいなへまをする。どう気をつけたらよいかなと思いました。また、どうやってタバコスティックを取り出そうかとも考えました。
そうして歩き続け、家の明かりが見え、ズボンの右ポケットに手をやると、なんと空っぽです。
落とした?いや、考えられない。ロッカーにつけっぱなし?会社にもう一度戻るしかない。もし、無いと面倒なことになる。車のキーもないから、歩くしかない。タバコもまた、我慢しなくちゃいけない。会社に誰かいるか電話してみる?
いや、こんなことで、電話できない。自分の始末は、自分でつけないと。
などと思いながら、会社に向かいました。いつもは、苦にならなくなった通勤路も遠く感じられます。
ロッカールームに着くと、確かにキーの束がロッカーに差しっぱなしでした。
抜いて、すぐ家に向かいました。
再度家の明かりが見えました。
全くとんでもない一日だった。健康には、良いかもしれないが。などと思った時、ピキッと腰の筋肉に割と強い痛みが走りました。ヤバい、半年前に痛めた腰痛の再発か?歩き過ぎたか?とはいえどうしたら良いかわからないから、とにかく家に帰ろう。
やっとのことで家にたどり着いて、横になりました。腰は、どうやら一過性らしく安定しています。一安心です。
タバコキットの筒の中は先のとがった
ドライバーで取り出せました。
夕食は有り合わせのもので済ませました。
それにしても、これは脳の老化現象なのだろうか?こんなことが、頻繁に起きたら末期的だ。とにかく何か対策をたてなくては。そう思いながら、歩数計を見ると1万5千歩でした。
後日、ロッカーキーは、社員証にリングで繋ぎ、車と部屋の鍵は、ズボンのベルト通しにバネ状のストラップでつないでおくことにしました。
人生は 死ぬ時までの 暇つぶし
遊々たれと 我心得り
何のためにもならない暇つぶしのお話でした。遊々とはいきませんでしたが。
サーヴァカ